9.　待つひと

はんぱな写真には、きっとわけがある。ぼくはこの門を写そうとして、迷いながらシャッターを切ったのである。 　「どうしてこの人は、門の前で立ちっぱなしなのだろう？」 　答はやがてわかった。彼は客のお参りがすむのを待つ、タクシーの運転手さんだったのである。 　ぼくがそれに気づくのとほぼ同時に、彼はぼくのカメラに気づき、すまなそうに謝った。いや、運転手さん、あなたが謝ることはありませんとも。 　もう釘抜地蔵の門などどうでもよかった。ぼくは彼に会釈して、その場を去った。

2002年9月23日　釘抜地蔵

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