3.　歩くひと

弘法さんの市の日、東寺の門前で北海道産のタマネギまで売っているのを見て、なにげなく一枚シャッターを切ったもの。 　飄然と歩くこのお爺さんの存在を、そのときぼくはまったく意識していなかった。つまり撮ったのではなく、写り込んだのである。 　お爺さんは、市には目もくれない。彼は歩くひとである。 　ぼくは、篆刻家の物川先生が学生時代に愛読していたリルケの詩の一節を思い出した。 　　　　　　　　見よ、彼は歩き　町を切断す。

2002年9月21日　東寺

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